その他の治療

顎変形症の矯正治療について

顎変形症について

一般に上顎あるいは下顎が前に伸び過ぎていたり、逆に顎が小さいなどで上下の歯の噛み合わせが大きくずれてしまっていたり、あるいは顔が非対称で歪んでいるような場合は「顎変形症」と総称される病気である可能性があります。

顎変形症のセルフチェック

顎変形症には様々な症状があります。下記にあてはまる異常があるかどうか、まずはご自身でチェックしてみましょう。

  • 下顎が前に出ている・大きい(下顎前突症)
  • 下顎が後ろに下がっている・小さい(下顎後退症・小下顎症)
  • 上顎が後ろに下がっている・小さい(上顎後退症)
  • 前歯が噛み合わない(開咬症)
  • 下顎が左右にずれている(下顎非対称症)
  • 前歯が著しく突出している(歯槽前突症)

このような症状があると、うまく噛めない・言葉がわかりづらいなどいろいろな機能障害がでてきます。また「受け口」や「出っ歯」などといわれて容貌に一人悩む方も少なくありません。

顎変形症の矯正治療について

顎変形症は、まだ小さい子供のうちは歯の矯正で対処できる可能性もありますが、成人してからは時間的・社会的な制約だけでなく、医学的な理由からもなかなか矯正のみで治療することは難しくなってきます。

現在では、このような方々に対して多くの場合、矯正治療に顎矯正手術を組み合わせる「外科的矯正治療」により、治療することが可能になっています。

外科的矯正治療のメリットとデメリット

上下顎骨の不調和が大きい顎変形症を矯正治療単独で治療した場合、顎骨の不調和を歯の傾斜によって代償的に治すため、歯周組織*の負担が大きく安定した噛み合わせを得ることが難しいと言われています。

外科的矯正治療のメリットは、不正咬合の主要な原因である顎の位置を骨切り手術により改善することで、歯や歯周組織に負担をかけることなく安定した噛み合わせ・機能および調和のとれた顔貌を得られるところにあります。

一方、リスクは骨切り手術により一時的な知覚異常が生じる可能性があること、入院を伴うため社会活動の制約を受けることなどがあります。

*歯周組織:歯を支える周囲組織の総称で、軟組織の歯肉、歯根膜と硬組織のセメント質、歯槽骨の4つの組織を指します。

外科的矯正治療の流れ

  1. Step1.初診(相談)

    患者様のお口の写真・側面・正面の顔の写真を撮影します。そして患者様と同じような過去の治療例を選び外科的矯正治療の概要を説明させて頂きます。

  2. Step2.顎口腔機能検査

    通常の矯正治療検査(歯型・噛み合わせの型・レントゲン写真)に加え下顎運動・咀嚼筋筋電図の検査を行います。

  3. Step3.顎口腔機能診断

    予測模型やレントゲン写真により治療方針、装置、費用等を説明します。ご理解頂いた後検査資料をお渡します。検査資料を持参して 音羽病院 京都顎変形症センター 横江義彦先生 を受診して頂き外科的な説明を受けて頂きます。顎矯正手術にもご理解いただければ術前矯正治療へと移っていきます。

  4. Step4.術前矯正治療(1-2年)

    マルチブラケット装置により歯を動かします。

  5. Step5.顎矯正手術

    顎の骨を動かします。

  6. Step6.術後矯正治療(6-12か月)

    歯列の細部調整と手術後のリハビリテーション。

  7. Step7.保定

    動かした歯を維持・安定させる治療です。
    マルチブラケット装置を撤去し、保定装置を装着します。

提携医院について

クシモト矯正歯科は、2002年以来、京都市山科区の 洛和会音羽病院 と提携し、京都口腔健康センター(京都顎変形症センター)所長の横江義彦先生に顎変形症の顎矯正手術をお任せしています。

顎矯正手術について

顎変形症に対する手術には大きく分けて二つあります。上顎骨、下顎骨といった骨全体を手術で前後、上下、左右に移動したり(骨切り術と呼びます)、歯を含む骨の一部だけを切って動かし、噛み合わせと容貌を正しく整えるやりかたです。

手術は全身麻酔下で行い、移動させた骨はからだに為害作用のない材料でできたネジやプレートで固定します。アゴの安静が図られるよう、顎間固定といって上下のかみ合わせを固定した状態で手術は終了しますが、これも1週間ほどの辛抱です(ただし、手術方法によっては3週間固定する場合もあります)。基本的にはすべての操作を口腔内で行いますから、顔の外にずっとあとまで残る手術瘢を作ることはありません。

あっちの骨をこっちへやったり削ったりと、まるで積み木遊びか木工細工のようですが、実はそれほど単純ではなくて少々問題があります。ご存じのように顔にはいろんな感覚器官が集中していて血液の流れが豊富です。骨の中にも太い血管や神経が通っていますから、切る位置や方向、量には様々な制約や限界があります。したがって、だれもが望みどおりに顎の形を自由に変えられるというわけではありません。

顎矯正手術の計画にあたって一番大切なのは、患者さんにあった適切な方法(矯正治療と手術との組み合わせなど)を探すことです。決して見かけだけの改善に終わることなく、顎顔面の持つ重要な機能の調和を目指して、患者さんとともに治療法を模索し、良い結果が得られるよう努力しています。

顎矯正手術の種類

基本的に歯と顎の調和を整える手術で、上顎(上顎骨)に対する手術と、下顎(下顎骨)に対する手術があります。
上顎にも下顎にも問題があるケースでは、両者併用の手術を行います。

上顎骨を動かす手術

上顎骨を前後・後方・上下・左右に、また幅の拡大・縮小を行う手術があります。
(Le Fort I型骨切り術・前歯部歯槽骨骨切り術・外科的急速口蓋拡大術など)

下顎骨を動かす手術

下顎骨を前方・後方・左右に、また顎の先のオトガイを出したり小さくしたりする手術があります。
(下顎枝矢状分割法・下顎枝垂直骨切り術・前歯部歯槽骨骨切り術・オトガイ形成術など)

詳しくは、京都顎変形症センター:顎矯正手術の種類 をご覧ください。

(上記、顎変形症について・顎変形症のセルフチェック・顎変形症の矯正治療について・顎矯正手術についての引用および参考元:日本顎変形症学会:顎変形症に関する基礎知識

治療費について

顎変形症の治療は健康保険が適用できます

更生医療指定機関を受診し「顎変形症」と診断されますと、顎変形症の矯正歯科治療に健康保険が適用されます。(指定されていない施設で顎変形症の矯正治療をする場合は、自費診療となります。)
更生医療指定機関として施設が認定されるためには、設備の基準と適切な医療機関で5年以上の矯正臨床経験および口唇口蓋裂の治療経験のある歯科医師が常勤している等の要件を満たすことが必要です。また、顎変形症に保険を適用するためには施設基準があり、顎運動測定器・筋電計等の器材の設置が義務づけられています。

当院は「指定自立支援医療機関(更生医療指定機関)」であり、顎変形症に保険適用が可能な「顎口腔機能診断施設」です。

顎変形症の治療は高額療養費の申請ができます

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」(こうがくりょうようひせいど)があります。
上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみも設けられています。

上限額などの詳細につきましては、引用元:厚生労働省HP:高額療養費制度を利用される皆さまへ にてご確認ください。

症例(上下顎骨の移動例)

上顎後退症・下顎前突症

上顎後退症・下顎前突症

【症例】

「下顎が出ていることや上顎が引っ込んだ感じがする、前歯で噛めない」とのことで治療を希望されました。

【治療内容】

「反対咬合を伴う顎変形症」と診断され、矯正治療のみでは安定した噛み合わせが得られないため外科手術を併用することになりました。術前矯正治療の後に、上顎は前、下顎は後方へ移動しました。上顎の位置に問題がなければ下顎のみで行う場合もあります。入院期間は約1週間でした。そして、歯列の細部調整と手術後のリハビリテーションを行いました。

上顎前突症・下顎後退症

上顎前突症・下顎後退症

【症例】

「顎がない、出っ歯観がある、うまく物を噛めない」とのことで治療を希望されました。

【治療内容】

このように下顎が小さい方にはイビキをする方が多いと言われています。「上顎前突症と下顎後退症を伴う顎変形症」と診断され、術前矯正治療の後に、上顎の反時計方向の回転と下顎の反時計方向の回転と前上方移動、加えてオトガイ形成術も行いました。入院期間は約1週間でした。そして、歯列の細部調整と手術後のリハビリテーションを行いました。

開咬症

開咬症

【症例】

「前歯で麺類を噛み切ることができない、正しい発音ができない」とのことで治療を希望されました。

【治療内容】

このような噛み合わせでは、後ろの方の歯(臼歯)への負担が大きいです。開咬の程度が大きい場合には、上顎の後方を上に移動すると共に下顎を上顎にあわせて移動します。開咬の程度が小さいと下顎のみで行う場合もあります。入院期間は約1週間でした。そして、歯列の細部調整と手術後のリハビリテーションを行いました。

上下顎非対称症

上下顎非対称症

【症例】

「物が噛みにくい、顔が歪んでいる」ことを気にされて治療を希望されました。

【治療内容】

このような症状の場合、原因が下顎が偏位しているだけでなく、上顎の垂直的な位置以上に問題がある場合もあります。上下歯列の排列後、上顎を反時計方向(正面から見て)に回転させ、下顎をその位置に移動し対称性が得られるようにしました。左右の奥歯で均等に物が噛めるようになりました。入院期間は約1週間でした。歯列の細部調整と手術後のリハビリテーションを行いました。

(模式図引用元:音羽病院横江先生の「顎矯正手術を受けられる方へ」)

過去10年間の顎変形症に関わる学術活動

  • 2010年9月27日 第69回日本矯正歯科学会学術大会(2010-09-27~29、横浜)

    非機能性下垂体腺腫を伴った骨格性下顎前突症の外科的矯正治療

  • 2012年6月18日 第22回顎変形症学会学術大会(2012-06-18~19,福岡)

    術前矯正に先立ち上顎洞内骨移植により傾斜歯の歯軸改善を試みた2例(共同演者)

  • 2012年9月26日 第71回日本矯正歯科学会学術大会(2012-09-26~28,盛岡)

    外科的矯正治療を行ったPierre Robin 症候群の一症例

  • 2015年6月4日 第25回顎変形症学会学術大会(2015-06-4~5,東京)

    顔面外傷後変形治癒に対して顎矯正手術を応用した2例(共同演者)

  • 2017年第62回 日本口腔外科学会学術大会(2017-10-21,京都)

    LeFortI型骨切り術と同時にDown fracture techniqueによる上顎洞底挙上術を行った2例(共同演者)

  • 2018年10月30日 第77回日本矯正歯科学会学術大会(2018-10-30~11-1,横浜)

    上顎臼歯部欠損を伴った骨格性開咬に対し外科的矯正治療とインプラント補綴治療を行った一例

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